2017秋学期 金曜 質的調査法 4週目
前回までのあらすじ
スノーボールサンプリング
初めにインタヴューした相手から伝手をたどってさらに対象回答者を増やしていくこと
ただし、派閥等の存在から、人脈だけでは繋がりにくい人・グループがいることも常に留意する。
まずは活動に参加してみる
個別のインタビューをする前に、一緒に時間を過ごして共体験してみる
→ インタビューはある程度人間関係ができてから。
※体験に関してもノートをとっておき記録する
フィールドノートをとる
- 調査の記録のために文書として残す
- インタビューは相手の許可があれば録音するべきだが、それ以外の時間についても記録を残すことが重要
- リアルタイムでノートをとれないことが大半なので、インタビュー後すぐにまとめること
- のちの分析はこのノートが根拠となる。
何を書くか
- いつどこで誰が、など5W1Hに関する情報
- 文脈・状況、見た聞いた感じたこと、など
- 実際の書き方は自分流でやりやすい方法をとればよい
インタビュー実施に当たって
- 適切な場所を選ぶ
もちろん静かな場所の方が録音しやすいが、環境によっては緊張してしまうかも
喫茶店などでおしゃべり感覚でやることがいい場合もある - 質問紙に基づきながらも、臨機応変に
- 相手の立場に心を寄せながら聞く
- 適度に相槌を打つ、相手の言ったことを言い換えてみる
- 沈黙を怖がらないこと
- ノートに書きとることだけに必死にならない
- 相手が使っているキーワードを、こちらも使ってみる(同調?)
- 学術的な表現はなるべく使わない(難しくしないように)
調査の心得
- データ収集と分析は同時に行え
・仮説や予想は最初から持っているが、実際に調査を行う中で、
それらの崩壊と再検討の繰り返しで研究が進んでいく - 現場の視点に立つ
・外から見た結論をだすのはだめ
・この人たちにとっての○○を考える
・そうはいっても、現場の温度差もあることに留意 - 調査社は透明な存在ではない
・対象は調査者自身から幾何か影響を受けていることに留意
・対象者が調査者をどう思っているのかを理解すべし
→ 相手と自分の理解がずれていたとして必ずしも糺す必要はないが、なぜそうなっているのかという原因を把握することが肝要 - 得られるデータは調査する人によって異なる
・何を大事なデータとするかは、観察者によって違う
・インタビューにおいても、相手から何を引き出せるかは諸所様々
・質的調査における調査者の相違による「正しさ」は論じられない
・再現性に拘り過ぎず、自らが見聞きしたことを忠実に
・自分で集めたデータから、自分なりの結論を導くこと
問い・データ・結論
- 問いと集めたデータが一致しない……
→ 対応する結論が導き出せなかった - 逆に、結論ありきの問いをでっちあげなければならなくなった
- 或いは、最初の予想からはみ出さない、当然の帰結になってしまった……
理想的な研究フロー = データを集めながら分析し修正し問いを練り直していく
参考:"厚い記述"
"厚い記述とは、クリフォード・ギアツによって提唱された概念。状況をまったく知らない人でもその行動がよく理解できるように、行動そのものだけではなく文脈も含めて説明することを指す。
われわれは誰かから目配せをされても、文脈がわからなければそれがどういう意味か理解できない。愛情のしるしなのかもしれないし、密かに伝えたいことがあるのかもしれない。あなたの話がわかったというしるしなのかもしれないし、他の理由かもしれない。文脈が変われば目配せの意味も変わる。
ギアツの考えではこのことは全ての人間行動に当てはまる。従って(先の例で言えば)目配せについてだけ記述する「薄い記述」と、行動と発話がその社会内で置かれている文脈を説明する「厚い記述」とは異なっている。ギアツによれば人類学者は厚い記述をしなくてはいけない。"
→ 文化の解釈学へ……
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