2017秋学期 月曜 生涯学習と図書館 6週目
前回までのあらすじ
2001年公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準 では利用者を五つのグループに分けていた、五つ挙げよ
memo
2015 一億総活躍社会の実現→介護離職ゼロ
2017 人生100年時代構想
固定化された学習者=均等に機械が分配されていないことに伴うもの
ニーズに対応できていない学習プログラム
社会参画への取り組みが不十分
高齢化率の高さが問題になってくるのは1980年台以降であった
高齢化率が高いのは秋田県 低いのは沖縄県だが、全体的にもまだ上がり続けている
1995 高齢化対策基本法…高齢社会対策の基本理念+国と地方公共団体の責務
5分野を設定、中期にわたる方針
- 就業・所得
- 健康・福祉
- 学習・社会参加
- 生活環境,調査研究等の推進
- 国民の意見の反映
社会における図書館の役割
- 知の収集・保存・伝達機能
- 学習センター
- 情報センター
- 場としての機能
はじめに
日本は世界に先駆けて急速に進む高齢化
→図書館サービスを再考することは喫緊の課題
文部科学省「長寿社会における生涯学習の在り方について:人生 100 年いくつになっても学ぶ幸せ『幸齢社会』」(2012)
公民館、図書館(中略)など地域の様々な関連施設は、行政が地域住民のニーズを把握し、多様な学習プログラムを企画・提供することができる地域の学習拠点
高齢化が進展する日本
超高齢社会:総人口に占める 65 歳以上人口割合(高齢化率)27.3%<2016>
2.6 人に1人が 65 歳以上、4人に1人が 75 歳以上。
平均寿命:男(80.75 年)、女(86.99 年)<2015>
高齢者:「福祉・保護」イメージと「生活者・活動者」イメージの二重性
→超高齢社会を支える担い手としての高齢者
高齢者をめぐる図書館サービス
1)ALA 「高齢者向け図書館・情報サービスガイドライン」<1999年>
- 高齢者層に関する最新データの入手と図書館の計画や予算への反映
- 高齢者のニーズを反映したプログラムやサービスの提供
- すべての高齢者にとって安全・快適・魅力的なコレクションや設備の提供
- 高齢者に対する情報サービスの拠点化
- 高齢者層対象の図書館プログラムの提供
- 高齢者へのアウトリーチサービスの提供
- 高齢者に対する丁寧・敬意をもった対応のための図書館員の訓練
2)日本における高齢者サービスの変遷:障害者サービスから独立したサービスへ
- 図書館において高齢者は従来障害者サービスの枠組みの中。
- 1970 年代〜1980 年代:障害者サービスの対象は「図書館利用が困難な人々」に拡大。高齢者はこの範疇に。
- 1980 年代半ば〜1990 年代:高齢者を障害者サービスの枠組みの中で考えることの是非をめぐる議論
- 2001 年「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」
高齢者に対するサービスの充実に資するため、高齢者にも配慮した公共の施設の整備とともに、大活字本、拡大読書器などの資料や機器・機材の整備・充実に努めるものとする。また、関係機関・団体と連携を図りながら、図書館利用の際の介助、対面朗読、宅配サービス等きめ細かな図書館サービスの提供に努めるものとする。 - 2012 年「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」
- 大活字本、録音資料等の整備・提供、図書館利用の際の介助、図書館資料等の代読サービスの実施
4 超高齢社会における図書館サービスの事例
1)事例1:認知症にやさしい社会の構築と図書館サービス:イギリスや日本
IFLA Professional Report 2007「認知症のひとのための図書館サービス・ガイドライン」
認知症の人々が、文字及び情報にアクセスし、生活の質向上および社会参加が可能になるよう、公共図書館のサービスは不可欠
認知症患者や家族への図書館サービス
『認知症にやさしい図書館ガイドライン』第1版
回想法と図書館
"回想法:米国の精神科医 R. Butler によって提唱
" 高齢者を対象とした心理療法の1つ
・ 認知症サポーター
2)事例2:コミュニティ主導という概念の下、情報格差解消をめざす図書館サービス:カナダ
- コミュニティ・デベロップメント・ライブラリアン(Community Development Librarians: CDL)設置 従来型の図書館モデルは多くの社会的排除者のために機能していない
- 図書館とコミュニティ相互の協働が重要なアプローチという考え方
3)事例3:アクティブシニアへの情報提供:日本
ボランティア活動に必要な情報提供
団塊世代の定年退職・ 終活セミナーや講演会の実施
北海道札幌市中央図書館(2015/2)
東京都葛飾区立上小松図書館(2016/1)
4)事例4:国立国会図書館の調査から
多様な高齢者:サードエイジとフォースエイジの出現と図書館利用
日常行動や図書館利用は非常に多様
例1. 大活字本の利用
「だんだん目が不自由になってきて、最近は(大活字本を)利用している」(70 代前半・女性)
「自分でも読まないし、借りているところを見たこともない。高齢者向けというよりは障害者向けで、文字が大きすぎる」(60 代前半・男性)
例2. ボランティア活動に積極的に参加し、そのための資料を求めて図書館を利用
「老人施設にも読み聞かせのボランティアに行っており、老人のための紙芝居をリクエストしていた。予算がないのでなかなか買ってもらえなかったが、高齢者用の紙芝居を5点ほど購入してもらえることになった」(60 代後半・女性)
高齢者の行動が多様であることを踏まえた図書館サービスが必要
図書館へのアクセス
アクセスの良さは今後大きな要素
例. 自宅近くの図書館は駐車場が狭いので、「本を持ってバスで駅まで出て電車に乗って往復することを考えると、
車で利用できる方がいいので都築図書館を利用している」(60 代前半・女性)
「以前は車で来ていたが、駐車場が有料になってから車を使わなくなった。
来るのが面倒なので、図書館にも来なくなった。年をとるともっと面倒になる」(70 代後半・女性・非利用)
解決策の例
「駅前返却ポスト」の設置、宅配サービスの実施
↔「年をとると耳が聞こえなくなるので、インターホンが鳴っていても気が付かない。・・・荷物の受取はとても大変だと、姉を見ていて感じる。」(70 代後半・女性)
図書館へのアクセスを検討する必要あり
図書館資料・情報へのアクセスニーズ
望まれる資料の充実や新しい機器やサービスの導入
- 「これまで実際に電子書籍を購入したことはない。図書館がタブレット端末を貸してくれて電子書籍を読めるのであれば、興味があるので利用してもいい」(60 代後半・男性)
- 「本を読むことがだんだん億劫になってきているので、上手な朗読が聞けるといい」(70 代後半・女性)
資料の充実も忘れずに!場としての図書館に対するニーズや認知症への高い関心
「場」としての図書館に対するニーズ
- 「老人いこいの家や集会場ではなく、図書館にカフェのようなコミュニティスペースがあって、本を通して生き方や生活にプラスになる話ができ、お互いを支え合っていくことができればいい」(60代後半・女性)
- 「図書館で回想法をやっていれば利用したい」(70 代前半・女性)
- 「図書館から認知症のお年寄りがいる施設に出向いて朗読や音読をしてくれるといい。読み聞かせだけでは受動的になるので、能動的な音読がいいのではないか」(70 代後半・女性)
=> 認知症への高い関心
主体的な社会参加への意欲=>自らが社会の一員として能動的に参画したいと考えている高齢者もいる
- 「高齢者にサービスを与えるのではなく、もっと高齢者が参加できることがあればいい」(60 代前半・女性)
- 「ギブ&テイクではないが、1 つ何かしてもらったら 1 つお返しする。年をとっても何かしてもらうばかりでは、充実感がない」(60 代後半・女性)
主体的な社会参画を目指す高齢者に図書館はどのようなサービスを展開できるのか。
まとめ:これからの高齢者サービス
1)高齢者にやさしいまちづくり(Age friendly Cities)(WHO):8つのトピック
- 屋外スペースと建物
- 交通機関(3)
- 住居
- 社会参加
- 尊厳と社会的包摂
- 市民参加と雇用
- コミュニケーションと情報
- 地域社会の支援と保健サービス
2)公立図書館における高齢者サービス
- 学習拠点としての図書館・生活情報獲得の場としての図書館
- 生きがい創出の場としての図書館
- 居場所としての図書館
3)一歩先の高齢者サービスをめざして
4)公立図書館:
- 誰でも無料で利用できる
- ひとりでいても違和感がない
- 利用に際して明確な利用目的を問われない
という特質をもつ公共施設
国立国会図書館『超高齢社会と図書館:生きがいづくりから認知症支援まで』、2017。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10338812